ムンプス難聴に関する文献
HP管理者が、知識の整理のためにまとめたリストです。これがすべてというわけではありません。
<ムンプス難聴の頻度に関する報告>
1) Everberg G:Deafness following mumps. Acta Otolaryngol 48:397-403,1957
20,000人に1人の発生頻度と報告(コペンハーゲン)
2) 西岡出雄、柳原尚明、丘村 煕、他:ムンプス難聴の発生頻度と臨床像、日本耳鼻咽喉科学会会報88:1647-1651,1985
昭和57年の愛媛県の流行の際に小学生の難聴発生率を、推定患者数126,000人から確実例6人、推定例1人の計7人の難聴発生の観察から18,000人に1人としている。(母数は観測定点小学校で総生徒の86%が罹患したことより、愛媛県下の小学生総数約14万7千人から計算してムンプス総数を12万6千人としている。ムンプス患者数はアンケート調査により愛媛県下の全耳鼻咽喉科診療機関でムンプス難聴と診断された小学生7名を用いている。)
同時に 著者の愛媛大で過去7年間にムンプス難聴40例(確実例12例、参考例28例)を経験と報告。年令4歳から12歳、耳下腺腫脹後25日後に難聴を発症した例もある。
3) 萩野 敏、須沢八千代:ムンプス罹患後に出現する感音性難聴(いわゆるムンプス聾)の統計的観察.臨床とウイルス8:277-281、1980
4) 野村恭也ほか:ムンプス難聴.耳鼻臨床81:41-47,1988
S57に発足した厚生省特定疾患急性高度難聴調査研究班の班長。これまで国内外でムンプス難聴の診断基準は無かった。この診断基準、臨床像、病態、予防など研究班の活動結果を報告する論文。班員の施設でムンプス難聴確実例は49例。15歳以下が34例。すべて一側性 1例のみ聴力が改善した。
5) 河口幸江、河野 淳、金林秀則、大浦則子、鈴木 衛:ムンプス難聴症例の検討.耳鼻臨床 96:10;865-869,2003
東京医科大で1988〜2002年の15年間に12例のムンプス難聴を診断。
4歳から39歳。1例のみ不顕性感染IgM↑。1例10歳女児でステロイド、γグロブリン、PGE1点滴行い、2週間後低音部のみ40dBまで聴力改善(聾が改善したのは森満の例とこれのみ)。2例で両側の難聴→3ヶ月経過をみた後人工内耳埋め込み行った。軽度難聴はなかった。一側聾で右7、左3例。耳鳴2例、めまい1例、耳鳴・めまいの両方出現が3例あった。耳鳴りはいずれも残るが、めまいは改善した。
6) 石川敏夫、市村恵一:ムンプス難聴の臨床統計.耳鼻臨床 97:4;285-290,2004
自治医大耳鼻科で1993年4月から2003年3月までの10年間にムンプス難聴14例を経験。確実例11例、準確実例1例、参考例2例。3歳から34歳、不顕性感染1例、耳下腺腫脹後8日までに難聴発生したものが77% 聴力の回復は無かった。
<近年の頻度の高い報告>
7) 石丸啓郎、中野省三、中野博子、奥山正和:ムンプスの中枢神経合併症について.小児科診療51:1421-1427,1988
1診療所(石丸小児科医院:松山市)で昭和59〜60年のムンプス患者551例中3例に予後不良の一側性聾経験。3歳以上のムンプス患者365例で発病5−7病日で聴力検査スクリーニングを行なったが、ムンプスによる難聴は上記3例のみだった。
8) 村井和夫ほか:最近経験したムンプス聾の3例.厚生省急性高度難聴調査研究班平成6年度研究業績報告書,pp71-73,1995
地域での小流行の際に3/1600の発生(1/225)
9) 木村慶子:ムンプス.小児科診療54:845-852,1991
中学1年4292例の聴力検査と抗体検査から多疾患を除いた14例がムンプスとの関連が否定できない一側性難聴として、ムンプス難聴発生率を14/3146(1/225)と推計
10) 青柳憲幸、児玉明彦、小池道夫、津野 博、小林昌和、上村 茂、柏井健作:ムンプス難聴、小児科37(11):1273-1279、1996
1993~1994年和歌山県那賀郡で小流行時に1470名から5人(1/294)のムンプス難聴が発生した。うち1例はMMRワクチンすみであった
11) 高良 聰子、平敷兼太郎、仲西明日香、平敷加津子、西里美佐子、井波明美:最近経験したムンプス難聴の3例−その発生頻度の検討も含めて−、外来小児科2(1):23-27,1999
沖縄県裏添市:1997年の1年間に、たから小児科医院で272名のムンプス患者を診察し、うち難聴を3例経験。7歳女、7歳女、6歳女 3/227(1.1%)の高頻度 耳鼻科では1980年代後半から注目されているのに小児科医の認識が浅い
<前向き調査の研究>
12) Vuori M,Lahikainen EA, Peltonen T: Perceptive deafness in connection with mumps; A study of 298 servicemen suffering from mumps. Acta Oto-laryng 55:231-236,1962
成人患者(1958〜1961にフィンランドの軍の病院でムンプスとして治療を受けた軍人)298例から13例の難聴発生。比較的軽症の12例は、6例が全快、6例が軽快し、残る高度難聴の1例だけが永続性で、また障害は高音域に多く、回復する例は数週以内に回復した。ムンプス患者すべてで初診時に純音オーディオグラムにて検査を行なうことにより難聴を発見した。 髄膜炎および髄液中の細胞数と難聴に関連は無かった。
<回復の可能性のある症例>
13) 岡本牧人、設楽哲也、八尾和雄:ムンプスによる感音難聴;ろうでない症例について.日本耳鼻咽喉科学会会報88:616-625,1985
7例の比較的軽症のムンプス難聴を報告。過去の報告例を合わせても日本では33例と少ない。両側が多い、成人に目立つ。小児では発見されない? 気付かれないうちに治る?
14) 森満 保ほか:最近経験したムンプス難聴.厚生省急性高度難聴調査研究班平成元年度研究業績報告書、pp139-140,1990
6歳男児 準確実例(右側聾)で、γグロブリン、ステロイド投与で約2週間後44dBまで回復した例外的な症例を報告
<ワクチンとの関係>
15) 古賀慶次郎ほか:MMR予防接種後に起こった両側急性高度難聴の一症例.日本耳鼻咽喉科学会会報94:1142−1145,1991
1歳11ヶ月男児。MMRワクチン接種11日後、色素沈着を伴う発疹、高熱。24日後急性小脳失調症で入院。退院後呼んでも振り向かないなどあり、3ヵ月後に聴性脳幹反応で両側無反応。
16) Kaga K,Ichimura K and Ihara M :Unilateral total loss of auditory and vestibular function as a complication of mumps vaccination. Int J Pediatr Otorhinolaryngol 43:73-75, 1998.
17) Galazka AM, Robertson
SE: Mumps and mumps vaccine. Bulletin of the World Hearth Organization,77(1)
3-14, 1999
WHOのムンプス撲滅プロジェクトの報告書に当たる
ムンプス関連ワクチンは1998年には世界82カ国で定期接種が行われている。
18)永井崇雄、中山哲夫:ムンプスワクチン、小児科診療 67(11)116-121、2004
19)永井崇雄ほか:ムンプスワクチンの副反応調査(最終報告)、厚生労働科学研究医薬品等医療技術リスク評価研究事業 安全なワクチン確保とその接種方法に関する総合的研究 平成15年度研究報告書 p306-316
<最近の小児科雑誌>
20) 川島慶之、井原一成、中村美詠子、福田 諭、中島 務、喜多村 健:流行性耳下腺炎(ムンプス)と難聴、小児内科 37(1) 63-66,2005
耳鼻科の先生方(厚生省の調査研究班メンバー)による。厚生労働省の全国臨床疫学調査によるムンプス難聴受療患者数の推計は、2001年には650名(95%信頼区間540〜760名)、感染症発生動向調査による2001年の流行性耳下腺炎の年間患者数226万人(95%信頼区間215~236万人)よりの推計で、難聴発生頻度は3500名に1人と記載している(ただし受療率からの推計なので重複患者もあり不正確)。不顕性感染も含めたムンプスウイルスによりもたらされた可能性のある難聴患者数をさらに推計し、ワクチン接種率の増加を訴える。
20-2)Yoshiyuku Kawashima et.al.:Epidemiological study of mumps deafness in Japan, Auris Nasus Larynx 32 125-128, 2005.
上の論文を英文で報告 2001年の一次アンケート調査でムンプス難聴の受診患者があったと報告した施設は415施設で、294例。このうち2次アンケートで確認できたものは、ムンプス難聴確実例110例、準確実例13例、参考例23例の計146例。143例が片側で3例が両側難聴。59例にめまい、66例に耳鳴りの合併あり。4例のみムンプスワクチンを受けていた。 このうちで難聴の発症時期の不明なもの、難聴発症後2ヶ月以上経過しての受診を除いたムンプス難聴患者は90例であった。
<その他>
21) 高石 司、阿部真琴、武田憲昭:ムンプス不顕性感染によりめまい、難聴をきたした3歳児の症例、Equilibrium Res vol.62(3)199-204,2003
22) 大屋耕子:再感染によるムンプス難聴例、耳鼻臨床 96:6 ;499-502、2003
幼少時にムンプス感染の既往のある25歳保育士で、8/9耳鳴、8/14フラフラ感、8/17右難聴8/18より左顎下腺腫脹 ムンプスIgM<0.8 ムンプスIgG42.9(2週間後 IgM1.05 IgG>128.0)
ワクチン接種がすすみブースター効果がなくなってくると、抗体価の低下した成人あるいは老人の再感染例が増加することが懸念される。
23) 神前英明、鈴木幹男、北西 剛、北野 博也、矢澤代四郎、北嶋和智、花田 誠:ムンプス難聴の検討、耳鼻臨床 92:9;947−951,1999
滋賀医大耳鼻科を1982−1998年に受診したムンプス難聴10例の検討。6歳から34歳。腫脹から難聴発生まで0から15日。非回転性めまいの訴えが7例。1例のみ治療中に低音域で若干の聴力改善があったが、長期観察できた6症例で聴力改善は無かった。めまいは平均1.2ヶ月で消失。1例で10ヵ月後に同側遅発性内リンパ水腫を発症。
24)岡藤輝夫:おたふくかぜワクチン歴をもつ小児に発症したSecondary Vaccine Failureによると思われるムンプスの8例.小児感染免疫6:131-134,1993.
日本の古い(ワクチン導入前の)文献
25)大島弘至、降矢宣成:流行性耳下腺炎性聾の臨床的観察.日耳鼻 59,1351−1362, 1956
ムンプス難聴28例を経験
急性期に組織的に調査を行なっても 難聴を見出しえなかった
26)神崎 仁、木村慶子:東京都内−小中学校におけるムンプス罹患率、ワクチン接種率と合併症に関する調査結果(最近6年間の傾向).厚生省特定疾患急性高度軟調調査研究班昭和59年度研究報告書.41-42p 1985.
26)花田 力ほか:日耳鼻 65,43,1962
1年間に5例認めた
27)黒田建彰ほか:耳鼻臨床 72,1585,1979
3年間で14例報告